ガブリエル・ガルシア・マルケスからのお別れの手紙
2014年4月19日
Farewell
from Gabriel Garcia Marquez
4-19-14http://www.suzanneliephd.blogspot.co.uk/2014/04/farewell-from-gabriel-garcia-marquez.html
お別れの手紙 |
神がもし、いまの私のことをしばし忘れてもう少しでも生かしてくださるなら、私は力の限りを尽くして生きることでしょう。
私が何を考えているか、すべてを語ろうとはとても思いません。ただ、話す内容についてもっと配慮するでしょう。
ものごとに対して、そこにいかなる価値があるかよりも、何を表そうとしているかに真価を認めましょう。
あまり眠りません、でも夢をもっと見るでしょう。目を閉じている間は、1分につき60秒もの間光を無駄にしているのですから。
他人が止まっても私は歩くでしょう。他人が眠っていても私は目覚めたままでいることでしょう。
もし神が私にほんの少しでも命を与えてくれるなら、身なりはシンプルにし、身体も魂もむき出しのまま太陽の下ですべてを委ねることでしょう。
すべての男性諸君、年をとると恋に落ちることもなくなると考えるようだが、大間違いです。恋に落ちるのをやめるから、年をとるのです。
子供たちには翼を与えることでしょう。でも、どうやって飛ぶかは子供たちに任せておくでしょう。
老人たちへ、年をとったから死がやってくるのではありません。忘れやすくなると、死が近づくのです。
私は皆さんとたくさんのことを学んできました。誰でも山の頂上に住みたがっていることも。けれど、本当の幸せは、丘の頂上にゆくまでの道のりや、どんな登り方をするか、その中で手に入れるものです。みな、それを知らないでいます。
生まれたばかりの赤ん坊がその小さな手でお父さんの指を掴むと、お父さんはもう一生赤ん坊の虜になるのだということを学びました。
男性が他の男性を見下ろしてもよい時があるなら、それは相手が地面に伏せているのを助けてあげる時に限ります。これは義務です。こういうことも学びました。
何を考えているかではなく、どう感じているかを常に話してください。あなたが眠っているのを眺めていられるのも今日が最後だともしわかっていたら、私は力の限りあなたを抱きしめ、神に祈ることでしょう。どうか、私をあなたのソウルのガーディアン・エンジェルにしてください、と。
もしあなたに会うのはこれが最後だとわかっていたら、私はこう言うでしょう。「愛しているよ」と。
いつも夜は明け、ふさわしい行動をとるチャンスを人生は与えてくれます。でももし私が間違っていたら、そして私には今日しか残されていないとしたら、あなたに心から伝えたいのです。どれだけあなたを愛しているかを。そして絶対にあなたを忘れはしない、と。
若かろうと年老いていようと、必ず明日も生きられるとは限りません。愛する人に会えるのは今日が最後かもしれないのです。だからこそ、待ってはいけません。今日、そうしてください。明日を迎えられなかった時のために。微笑んだらよかった、抱きしめたらよかった、キスすればよかった、そうすることもできたのに、と悔いが残りますよ。残された人の最後の望みをかなえるほど余裕がなかったことに悔いが残りますよ。
愛する人をそばにおいてください。あなたはどれほどその人を必要としているか、どれだけ愛しているか、顔をみて伝えてください。その人を愛し、大切に労わってください。「ごめんなさい」、「許してください」、「お願い」、「ありがとう」ときちんと伝えてください。あなたが知る限りの、あらゆる愛の言葉を使ってください。
あなたが秘密にしている考えについて知る人は誰もいません。その考えを伝える知恵と勇気を持てるよう、神にお願いしてください。
あなたの友人や、あなたの愛する人に伝えてください。どれだけ彼らがあなたにとって大切かを。
この手紙を、あなたの愛する人に送ってください。もし今日、そうしなければ…明日は昨日と変わりはないでしょう。もしあなたが決して送らなかったとしても、関係ありません。今しかないのです。
あなたのために。たくさんの愛をこめて。
あなたの友人
ガブリエル・ガルシア・マルケス
ガブリエル・ガルシア・マルケスは2014年4月18日木曜日に高次プレーンに移りました。彼の「ファンタジー」で、彼がよく好んで書いていたところです。87歳でした。